ラジオ体操で痩せる方法は、体より先に「暮らしの乱れ」をほどくことでした
6月28日、日曜日。窓の外は、梅雨の湿気をまだ少し含んだまま、夏の入口みたいな明るさをしていました。もうすぐ夏越の祓。半年分の疲れや迷いを、茅の輪をくぐるように少しだけ手放す季節です。
私は朝から、スマホの画面をぼんやり見ていました。誰かの引き締まったお腹。きれいに盛られたサラダ。朝5時に起きてランニングしている人。プロテインを飲んで、ピラティスに行って、夜は白湯で終わる人。
すごいなと思いました。ちゃんとしてるなと思いました。
そして、同じくらいの速さで、心の中の小さな私がつぶやきました。
「私は、今日も無理かも」
これ、たぶん私だけじゃないと思うのです。
痩せたい気持ちはあります。鏡を見て、あれ、去年より背中が丸いかもと思う日もあります。お気に入りのワンピースを着た時に、ファスナーが少しだけ強気になっていて、こちらがなぜか謝りたくなる日もあります。
でも、ジムに入会するほどの勢いはない。仕事終わりに走るほど体力もない。食事制限を頑張りすぎると、夜中に急に心が荒れて、冷蔵庫の前で無言の会議が始まります。
痩せたい。でも、もう自分をいじめるダイエットはしたくない。
そんな時、私がたどり着いたのが、まさかのラジオ体操でした。
正直に言うと、最初は少し笑っていました。ラジオ体操で痩せるなんて、そんな小学生の夏休みみたいな話ある?と思っていました。カードにハンコをもらうわけでもないし、近所のおじいちゃんに「腕が曲がっとる」と注意されるわけでもありません。
でも、ある朝、洗面台の前で顔を洗ったあと、ふと思ったのです。
「3分なら、できるかもしれない」
この「できるかもしれない」が、30代の私にはものすごく大事でした。
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痩せたいのに動けない朝、ラジオ体操は自分を責めない入口になる
30代になってから、体の変化は急にやってくるというより、静かに部屋の隅に座っている感じがします。
ある日突然太るわけではありません。少しずつ、疲れが抜けにくくなります。少しずつ、肩が重くなります。少しずつ、眠りが浅くなります。少しずつ、昔と同じ食べ方なのに、体だけが律儀に結果を出してきます。
しかも怖いのは、体の変化よりも、心のほうです。
「また続かなかった」
「どうせ私には無理」
「きれいな人は、最初から違う」
こんな言葉が、朝の洗面台や夜のお風呂場に、ふっと出てくるのです。
ラジオ体操のいいところは、そこに気合いがいらないことでした。ウェアを買わなくていい。メイクしなくていい。誰にも見せなくていい。ヨガマットさえ、なくてもいいです。
パジャマのままでもいい。寝ぐせのままでもいい。昨日ちょっと食べすぎた自分のままでもいい。
ただ、音を流して、腕を上げる。横に曲げる。ひざを伸ばす。胸を開く。
たったそれだけなのに、体の中で止まっていた空気が、少しずつ動き出す感じがありました。朝の自分に「今日こそ変わろう」と大げさに宣言するのではなく、「とりあえず、ここから始めようか」と声をかける感じです。
私はこれが、すごく好きでした。
ダイエットって、いつの間にか自分を裁く場所になりがちです。体重計の数字で一喜一憂して、食べたものを反省して、鏡の前で足りないところばかり探してしまう。
でもラジオ体操は、反省会ではありませんでした。
腕を大きく回すと、肩甲骨のあたりがじわっと動きます。背中が縮こまっていたことに気づきます。深呼吸をすると、胸の奥に残っていた焦りが少しだけほどけます。ジャンプのところで床がミシッと鳴って、なぜか一人で笑ってしまいます。
その瞬間、痩せるために動いているはずなのに、先に救われるのは心でした。
もしかしたら、30代のダイエットに必要なのは、いきなり燃えるような努力ではなく、もう一度、自分の体を味方に戻す時間なのかもしれません。
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「たった3分」を本気でやると、雑に扱っていた体の声が聞こえてくる
ラジオ体操は、ゆるい運動だと思っていました。
でも、本気でやると、びっくりします。
指先まで伸ばす。かかとをきちんと上げる。体を横に倒す時に、脇腹が気持ちよく伸びるところまで動かす。腕を回す時は、肩だけではなく背中から大きく回す。前屈では、無理に床へ手をつけようとせず、太ももの裏が「おはよう」と言うところまで伸ばす。
これだけで、終わったあと少し息が上がります。
私は最初、ラジオ体操をなめていました。ごめんなさい、ラジオ体操。あなた、思ったより仕事ができるタイプでした。
特に、普段デスクワークやスマホ時間が長い人ほど、体のサボっていた部分がよくわかります。腕を上げるだけで肩が詰まる。体をひねるだけで腰が重い。軽く跳ぶだけで、足首が不機嫌そうにする。
そのたびに、私は思いました。
「太ったから嫌だ」じゃなくて、「ずっと放っておいてごめん」だったのかもしれない。
この気づきは、少し痛かったです。
私は自分の体に、結果ばかり求めていました。細くなってほしい。軽くなってほしい。きれいに見えてほしい。服をかわいく着こなさせてほしい。
でも、その体を毎日ちゃんと動かしてあげていたかと言われると、胸を張れませんでした。階段よりエスカレーターを選び、寝る直前までスマホを見て、疲れたら甘いもので心をなだめる。体はずっと、私の暮らしを引き受けてくれていたのに、私は体の文句ばかり言っていたのです。
ラジオ体操を始めてから、私は少しだけ体への言葉が変わりました。
「なんで痩せないの」ではなく、「今日も一緒に動こう」。
「このお腹いやだ」ではなく、「ここに力を入れてみよう」。
「また太った」ではなく、「最近ちょっと疲れてたね」。
この変化は、体重計にはすぐ出ません。誰かに褒められるほどの変化でもありません。けれど、朝の気分が違います。姿勢が少しだけ変わります。歩く時に、お腹の奥を意識するようになります。
そして不思議なことに、体を雑に扱いたくなくなるのです。
ラジオ体操をした朝は、朝ごはんを少し丁寧に選びたくなります。冷たいものばかりではなく、温かい味噌汁を飲みたくなります。エレベーターを待つより、一階分だけ階段にしてみようかなと思えます。
ラジオ体操そのものが魔法のように脂肪を消してくれるわけではありません。
でも、乱れていた一日の最初のボタンを、そっと留め直してくれるのです。
これが、私にとっての「ラジオ体操で痩せる方法」でした。体操だけで人生を変えるのではなく、体操をきっかけに、自分を投げやりにしない時間を増やしていくことです。
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びっくりしたのは、痩せたことより「夜の私」が少し優しくなったこと
ここで、最後に少しだけ裏切る話をします。
私はラジオ体操を始めた時、正直、ウエストが細くなることを期待していました。二の腕がすっきりしたらいいなとか、背中の丸さが消えたらいいなとか、できれば夏の薄い服をもう少し堂々と着たいなとか、そういう欲はしっかりありました。
あります。今もあります。きれいごとだけで生きていけるほど、私は仙人ではありません。
でも、続けてみて一番変わったのは、そこではありませんでした。
いちばん変わったのは、夜でした。
前の私は、夜になるとよく自分にがっかりしていました。今日も大したことができなかった。仕事で気を使いすぎた。婚活の返信が来ない。友達の幸せそうな投稿を見て、よかったねと思いながら少しだけ胸がざわつく。肌の調子もいまいち。部屋も片付いていない。
そして、そんな自分を慰めるように、甘いものを食べたり、スマホをだらだら見たりしていました。眠る前に心が散らかって、明日の私に全部丸投げするように寝ていました。
でも朝にラジオ体操をした日は、夜の自分への言い方が少し変わったのです。
「でも、朝ちゃんと動いたじゃん」
たったそれだけです。
たった3分。大げさな努力ではありません。汗だくのトレーニングでもありません。誰かに自慢できるほどのことでもありません。
それでも、夜の私にとっては小さな証拠になりました。
私は今日、自分を完全には見捨てなかった。
私は今日、少しだけ自分の体に戻ってきた。
私は今日、ほんの3分でも、自分の未来に投票した。
この感覚が、思った以上に大きかったのです。
痩せる方法を探していたはずなのに、私が本当に欲しかったのは、「私はまだ大丈夫」と思える時間だったのかもしれません。
ラジオ体操で痩せる方法は、毎朝完璧にやることではありません。食事も運動も全部整えて、キラキラした生活に作り替えることでもありません。
むしろ逆です。
眠い日もある。やる気がない日もある。昨日食べすぎた日もある。恋がうまくいかなくて、心がぺしゃんこになる朝もある。肌荒れして、鏡を見たくない日もある。
そんな日でも、腕だけ上げる。深呼吸だけする。途中まででもいいから音に合わせて動く。
それで十分です。
ラジオ体操は、痩せるための派手な近道ではありません。でも、痩せたいと願う自分を嫌いにならないための、やさしい遠回りです。
そして、たぶん30代の私たちには、この遠回りが必要なのだと思います。
効率だけを追いかけて、正解だけを集めて、誰かの成功例をまねして、それでも心が置いてけぼりになることがあります。体重は落ちたのに、自分へのダメ出しだけが増えるダイエットなら、私はもう長く続けられません。
だから私は、明日の朝もたぶん、完璧ではない顔でラジオ体操をします。
寝ぐせのまま、パジャマのまま、少しむくんだ顔のまま。
腕を上げて、息を吸って、体を横に倒して、心の中で小さく言います。
「今日も、私を雑に扱わない」
6月の終わり、夏越の祓を前に、半年分の疲れを全部なかったことにはできません。でも、少しだけ軽くすることはできます。
大きな決意はいりません。
高い道具もいりません。
誰かに見せる必要もありません。
朝の3分だけ、自分の体に帰ってくる。
それが、私が見つけた、いちばん静かで、いちばん現実的なラジオ体操ダイエットです。
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