仕事って、いつからこんなに答えのないものになったんだろう

ChatGPT Image 2026年4月21日 10_05_45

朝の更衣室って、いつも少しだけ冷えていて、制服に腕を通す瞬間に、あ、今日も始まるんだなって思うんです。

ロッカーの細い金属のにおいと、誰かが置いていったハンドクリームの甘い香りが混ざっていて、まだ頭はちゃんと起きていないのに、体だけ先に「仕事モード」みたいな顔をしようとしていて。

鏡の前で前髪を直しながら、なんとなく口角を上げてみるんですけど、そういう小さい演出だけ妙に手慣れている自分にも、たまに笑えてしまいます。

ほんとは昨日の夜、寝る前までスマホを見て、気づいたら一時半を過ぎていて、将来のことなんて考えないようにしていたくせに、朝になったら急に「このままでいいのかな」っていう気持ちだけが、寝ぐせみたいに残っていたりして。

長く仕事をしていると、ちゃんと慣れていく部分もあるし、できることも増えていくし、前より落ち着いて見られるようにもなるんですけど、逆にそのぶんだけ、
私、何に向かって働いてるんだっけ、みたいな、答えの出ないことを急に考えてしまう日があるんですよね。




忙しい日は忙しい日で、そんなこと考える余裕もないんです。

お客様に声をかけて、笑顔で対応して、時間を見て、空気を読んで、先回りして動いて、気づけば夕方で、気づけば足がじんわり重くなっていて。

そういう日は、ああ今日もなんとか終わった、で済むんですけど、いちばん変な気持ちになるのって、むしろ普通にうまくやれている日だったりします。

ミスもなくて、人間関係もそこまで荒れてなくて、売上もそこそこで、上司にも何も言われなくて、ちゃんと「大人」として一日を終えられた日。

そういう日に限って、帰り道の信号待ちで、急に胸の中がすかっと空く感じがするんです。

え、じゃあ何が足りないの、って自分でも思うんですけど、その「足りなさ」が何なのか、言葉にしようとするとすぐ逃げるんですよね。

贅沢なのかな、とか。

もっと大変な人いるのに、とか。

ちゃんと働けてるだけいいじゃん、とか。

そうやって自分にツッコミを入れてみても、しっくりこないままコンビニに寄って、なんでもない顔でカフェラテと甘いものを買ってしまう。

で、家に着いて靴を脱いだ瞬間、なぜか一気に疲れて、「あ、私けっこう無理やり普通のふりしてたかも」って気づいたりするんです。

たぶん、あるあるだと思いたいんですけど、誰にも言いにくいんですよね。

仕事がつらい、ならまだ説明しやすいのに、そこまで不幸じゃないのに満たされない、みたいな気持ちって、ちょっと小さな恥みたいで。

しかも口にすると、めんどくさい人みたいじゃないですか。

私だったら、ちょっと思う。あ、今めんどくさいこと言ってるかもって。そこまでわかってるのに、消えてくれない感じがまた地味に厄介で。

昼間は案外平気なんです。

やることがあるし、人の目もあるし、現実はどんどん前に進むから。




でも夜、お風呂に入る前にベッドに腰かけて、そのままスマホを見てしまった時なんかはもうだめで、友達の結婚報告とか、誰かの転職の話とか、楽しそうな休日の写真とか、見なくていいものまで見てしまって、勝手に比べて、勝手に少し沈むんです。

別にその人が悪いわけじゃないし、むしろ幸せそうでいいなって普通に思うんですけど、そのあと自分の部屋を見渡した時の静けさが、妙に現実的で。

洗いかけのマグカップ、たたみきれてない洗濯物、明日のためにセットしていない目覚まし。



生活感って、たまに優しいのに、たまに残酷ですよね。


こんな毎日を、この先も続けていくのかな、とか。

転職したら何か変わるのかな、とか。

結婚したら気持ちは落ち着くのかな、とか。

そもそも私は何に不安なんだろう、とか。

考え始めるときりがなくて、でも答えはひとつも出なくて、最後にはだいたい「まあ寝ようか…」で終わるんです。

何も解決してないのに、眠気のほうが勝つあたり、私ってほんとに現実的なのか雑なのかわからないなって思います。

それでも翌朝は来るし、またそれっぽく髪を整えて、それっぽく社会人の顔をして出勤する。

この繰り返しが悪いわけじゃないのに、ずっと続くと思うと少し息が詰まる。

でも、変えるのもこわい。

その両方を持ったまま働いてる人、たぶん私だけじゃないですよね。

仕事の話になると、向いてるか向いてないか、みたいな言い方をされることが多い気がするんですけど、実際ってそんなきれいに分けられないなって思うんです。




接客が好きかと聞かれたら、好きな瞬間もあるし、正直しんどい瞬間もあるし。

人と話すのが得意そうと言われても、その日のメンタルによる、が本音だったりするし。

笑顔を褒められた日でも、裏でちょっと嫌な言い方をされて、地味に引きずってることもあるし。

逆に、今日はもう無理かもと思っていた日に限って、お客様のひとことに救われたりもするんですよね。

だから、合ってるから続けられる、合ってないから辞める、みたいな単純な話じゃない気がしていて。

好きと向いてるのあいだにも、生活があるし、お金のこともあるし、年齢のこともあるし、見ないふりをしている不安もちゃんとある。

しかも大人になると、そのへんをいちいち言葉にしないじゃないですか。

みんな普通に働いてるように見えるし、ちゃんとした顔で予定をこなしてるし、だから余計に、自分だけ立ち止まってるみたいに感じる日があるんです。

でもたぶん、みんな表に出してないだけで、一回くらいは思ってるんじゃないかなって。

仕事って何だろう、とか。

この先どうなるんだろう、とか。

今のままでいいのかな、とか。

そんなこと考えてる暇があるなら動けば、みたいな正しい声もあるのかもしれないけど、そういう話じゃない夜ってあるんですよね。

行動力とか前向きさとか、そういう単語が今日は少しまぶしすぎる、みたいな日。

昔は、いつかはっきりすると思っていたんです。

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自分に合う仕事とか、自分らしい生き方とか、何歳までには見つかるのかなって、ぼんやり。

でも気づけば三十歳で、びっくりするくらい、まだ揺れてます。

もう少し堂々としてる予定だったし、もっと自分のことを理解してる予定だったし、ちゃんとした大人になってるつもりだったのに、帰宅してメイクも落とさずスマホ見ながら寝落ちしてる夜とかあるので、予定って本当に予定のままだなって思います。

それでも仕事には行くし、ちゃんと挨拶もするし、人から見たら普通にやれているんだと思います。
それはそれで嘘じゃないんですけど、心の中では、まだ名前のついていない不安みたいなものをずっと持っている感じがして。

だけど最近、その不安をすぐになくそうとしなくてもいいのかもしれない、くらいには思うようになりました。

解決できていないのに、こんなこと書くのも変かもしれないんですけど、答えが出ないまま過ごした日にも、ちゃんと夕飯はあって、好きな香りのボディソープもあって、友達からのどうでもいいLINEに笑えたりする。

そういう細かいものに救われながら、私はたぶん今日も働いていて。

仕事の意味なんて大きい言葉で考えると急に遠くなるのに、誰かにありがとうって言われた瞬間とか、レジ締めが静かに終わった瞬間とか、帰り道の夜風が少し気持ちいい瞬間とか、そういう小さい場面のほうが、よっぽど現実なんですよね。

それでもまた、数日後には「このままでいいのかな」って思うと思います。

たぶん懲りずに。

たぶん同じように。

でも、そうやって何度も同じところをぐるぐるしながら働いていること自体が、もう生活なのかもしれないな、とも思ったりします。

後半になると、結局みんな何のために働いてるんだろう、って、すごく単純なのに人に聞きづらいことが浮かびます。

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お金のため、生活のため、誰かのため、自分のため、たぶんどれも本当で、どれかひとつに決めなくてもいいのかもしれないけど、じゃあ私は今どこにいちばん重さを置いてるんだろうって、ふと立ち止まりたくなるんです。

毎日ちゃんと職場に向かっているのに、心だけ少し遅れて歩いているような日ってありませんか。

頑張ってないわけじゃないし、怠けてるわけでもないのに、何かだけ置いてきた感じがする日。

あの感じの正体は何なんでしょうね。

明日のシフトを確認して、アラームをセットして、いつも通りの夜を過ごすだけなのに、心のどこかではまだ、別の未来みたいなものを少しだけ見ている。

見ているくせに、手を伸ばすほどは本気じゃない。

その半端さに自分で苦笑いしながら、それでもまた朝になる。

仕事って、慣れていくほどわからなくなることもあるのかもしれません。

それでも今日も、制服の袖に腕を通すんだと思います。