ATMの残高を見て言葉を失ったあと、リゾートバイト.comを開いていた私の本音

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夜の部屋って、ときどき「現実の音」しかしない日がある。

エアコンの風が壁に当たる音、冷蔵庫がうなって止まる音、洗濯物が乾ききらずに少しだけ重たい匂いを残している音。

私はソファの端に座って、片足だけ靴下を脱いだまま、窓の結露を指でなぞっていた。透明な水の筋が、ゆっくり下に落ちていくのを見ていたら、なぜか自分の気持ちも同じ速度で落ちていく気がして、笑っていいのか、笑えないのか、判断がつかない。

今日あった「小さな出来事」は、本当に小さい。

帰宅前、コンビニのATMで残高照会をしただけ。レシートに印字された数字を見た瞬間、息が一回、浅くなった。別にゼロじゃない。明日が即アウトってほどでもない。

でも、“余白”がない。何かが起きたら、何かを諦めるしかない、あの感じ。私はレシートを折ってポケットに突っ込んで、そのまま何も買わずにコンビニを出た。夜風が冷たくて、顔の表面だけがしゃんとした。

そのあと電車の中で、やたらと明るい広告が目に入った。旅行の広告じゃなくて、働く場所の広告。きらきらした海の写真の横に「住み込み」「短期」みたいな言葉が並んでいて、私は反射みたいにスマホを開いて検索してしまった。

リゾートバイト.com。前に名前だけ聞いたことがある、住み込みのリゾートバイト求人が集まってるところ。

家に着いて、メイクも落とさないまま、私はそのままサイトを眺め続けた。

誰にも言わなかった本音が、そのとき浮かんだ。

「私、いまの生活に“責任”を持つのが、ちょっと怖いのかもしれない」って。

生活を続ける責任。今の職場を続ける責任。人間関係を“ここで”維持する責任。そういうものを全部、ちゃんと抱えているふりが、今日は急に重かった。

わかる…って、言いながらスマホを閉じたくなる夜がある。

でも閉じたら、また明日がそのまま来るから、閉じられない夜もある。

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郵便受けの封筒と、今月の残高

家に帰ってポストを開けたら、薄い封筒が一通入っていた。こういう封筒って、だいたい嬉しくない。私は開けずにキッチンの端に置いた。ちゃんと見たら、また“対処”が始まる気がして。

対処って、すごく体力を使う。お金のこと、手続きのこと、将来のこと、上司への連絡、友だちへの返信。ひとつひとつは小さいのに、まとまると急に「巨大な岩」になる。

だから私は、現実から逃げるみたいにリゾートバイト.comを開いた。

調べてみると、リゾートバイト.comは株式会社グッドマンサービスが提供しているサービスで、全国の観光地(ホテルや旅館、テーマパークなど)で働く“住み込み”の仕事がたくさん載っている。

しかも、求人の多くが寮完備で、寮費が無料の案件が多いことが前提として紹介されていたりする。食事が付く案件も多いけど、無料か有料かは施設で違うから、担当に確認してね、という現実的な書き方もあった。こういう「夢だけじゃない感じ」に、逆に安心してしまった。

それと、地味に私が食いついたのが交通費の説明。勤務地までの交通費は“上限はあるけど支給される”、ただし多くの場合は勤務期間を満了したあとに最後の給与と一緒に支払われる。つまり、最初は自分で立て替える必要がある。ここがきれいごとじゃなく書いてあるのが、妙にリアルで、私の気持ちを冷ましてくれた。

冷めたのに、なぜかページは閉じなかった。
たぶん私は、“現実から逃げたい”んじゃなくて、“現実の配置を変えたい”だけだった。

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「住み込み」って逃げ?それとも引っ越し?

リゾートバイトって、言葉の響きだけ聞くと「楽しそう」が先に来る。

でも私は今日、そこに別の感情を見つけてしまった。うらやましさでも、ワクワクでもなくて、もっと地味で、ちょっと恥ずかしい感情。

それは、「一度、名前をリセットしたい」という気持ち。

職場で呼ばれる苗字、友だちに呼ばれるあだ名、家族の中での役割。全部が悪いわけじゃないのに、それらが積み重なると、呼ばれるたびに“期待”も一緒に背負わされる感じがする。しっかりしてるよね、とか、ちゃんとしてるよね、とか、そういう言葉に私はいつも小さくうなずきながら、内心では「しっかりしてない日もあるよ」って言いたくなる。

住み込みの仕事って、ある意味、生活ごと引っ越す。

自分の部屋の景色も、帰り道のコンビニも、いつものドラッグストアも、ぜんぶ一旦なくなる。なくなったところに、新しい勤務先の寮、知らない土地の空、知らない匂いが入ってくる。
その「入れ替え」が、今日の私には、救いに見えた。

しかも、調べた範囲だと、寮費が無料の案件や、水光熱費が無料の案件もあると紹介されていて、生活費が抑えられる分、手元に残るお金が増えやすい、という構造がわかりやすかった。貯金とか、今後の選択肢とか、そういう言葉が急に“机上の理想”じゃなくなる。

ただ、ここで私の本音がもう一段出てくる。

私が惹かれたのは「稼げる」より先に、「いなくなれる」だった。

この感情、たぶん今までブログであまり書いてこなかった。だって、いなくなりたいなんて言うと、弱い人みたいに見える気がするから。でも実際は、弱いとか強いじゃなくて、“疲れてる”だけの日もある。そういう日は、明日の予定を増やすより、明日の背景を変えたくなる。

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条件の文字を読むとき、私は何を怖がってる?

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ページを眺めながら、私はちゃんと細かいところも読んだ。
前払い制度の説明があって、「条件を満たしていれば、申請後3営業日以内に振り込まれる」と書かれていた。お金って、あるだけで心が落ち着くことがあるから、こういう制度があるのはありがたいと思った。

でも同時に、私はそこに“怖さ”も感じた。前払いが必要な状況を想像した瞬間、自分がちょっと情けなく感じたから。お金の心配って、誰もがするのに、なぜか自分のことになると「ちゃんとしてない証拠」みたいに感じてしまう。

あと、社会保険のこともFAQに書かれていて、2ヶ月以上勤務の人は加入できる、という案内があった。派遣契約でも社会保険に入れるのは安心材料になるし、短期だけじゃなく、ある程度の期間働く選択も現実的なんだなと思った。

こうやって情報を集めるうちに、私が怖がっているものが少し見えてきた。

それは「新しい環境」そのものじゃなくて、「今の環境に戻れなくなるかもしれない」怖さだった。

もしリゾートバイトに行って、寮の部屋で目が覚めて、窓の向こうに海や山があって、職場の人に挨拶して、仕事を覚えて、休日にその土地のスーパーで知らない食材を買うようになったら。

その生活に慣れてしまったら、今の部屋に戻ったとき、私は前みたいに平気な顔ができないかもしれない。

変化って、良いことのはずなのに、“変わった自分”を受け入れるのは案外しんどい。

でも今日、ATMのレシートを見たときの息の浅さを思い出す。

あの瞬間の私は、「今のまま」を続けることにも、同じくらい怖がっていた。

だから、今日の小さな気づきはこれだった。

私は「仕事を変える」より先に、「生活の舞台を変える」ことを求めていたのかもしれない、って。転職とかキャリアとか、立派な言葉を掲げる前に、いったん自分を置く場所を変えてみる。そういう順番も、ありなんじゃないか、と。

それは前向きな決意というより、ちょっとした違和感の発見に近い。「このままここで頑張る」以外のルートが、私の手の届くところにも存在していた、というだけの話。

もちろん、簡単じゃない。交通費は基本的に立て替えが必要だし、満了しないと支給されない場合があることも書いてある。行ってみたら合わない可能性もあるし、寮生活が性に合わない可能性もある。食事だって無料のところもあれば有料のところもある。

現実はちゃんと現実のままだ。

でも、それでも。
窓の結露を指でなぞりながら、私は思った。

「逃げたい」って気持ちを、無理に美談にしなくてもいいけど、「逃げたい」が出てくるほど頑張っていた自分を、雑に扱わなくてもいいんじゃないかって。

ねえ、もしあなたにも、今日みたいに理由のない息苦しさが来たら。

“環境を変える”って、どこまでが逃げで、どこからが生き直しなんだろう。