楽天ファッションの「カート」に、今日の私が全部入ってた

今日は朝から、部屋の空気がやけに乾いていて、加湿器の水が切れていることに気づくまでに少し時間がかかりました。冬の朝って、目が覚めた瞬間から「もうちょっとだけ布団にいたい」が勝つから、起き上がるだけで小さな根性を使う。窓の外は薄い青で、遠くの建物が冷えて見えて、なんとなく自分の気持ちまで固まっている感じがしました。

年始の休みって、嬉しいはずなのに、静かすぎる日がある。予定がないわけじゃないのに、誰にも会わない日が続くと、自分の輪郭が少し曖昧になるというか、昼と夜の境目も、仕事と休みの境目も、ちょっとだけ溶けていく。そういう日に私は、だいたいスマホを触ってしまいます。何かを見ていないと落ち着かない、みたいな顔をして。

今日の小さな出来事は、ほんとうに小さくて、たぶん誰にも話さないやつです。夕方、インターホンが鳴って、宅配便が届きました。受け取って、玄関で段ボールを抱えた瞬間、「あれ、私これ頼んでたっけ?」って、いちばんダサい驚きをした。中身は、先月の終わり頃に楽天ファッションで買ったニット。買った記憶はある。でも、買った理由が思い出せない。ちょっと怖い。

箱を開けると、ニットはちゃんとかわいくて、触った感じも悪くない。なのに、嬉しさがすごく薄かったんです。あの「届いた!」っていう、胸の奥がちょっと弾む感じが、今日は来なかった。かわいいのに。似合いそうなのに。むしろ、かわいいほど、何かが刺さる。

そんな日があるよね、って思いながら、私はなぜか楽天ファッションのアプリを開きました。届いたばかりのニットの横で、次の何かを探し始める自分に、ちょっと笑ってしまった。笑うしかない。だって、わかりやすく変だから。

「おすすめ」が優しい顔して、距離を詰めてくる夜

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楽天ファッションって、ぼーっと眺めていると、すごく優しいんですよね。コーディネートが提案されて、ランキングがあって、今だけのクーポンがあって、「あなたにおすすめ」がある。私の好み、私のサイズ感、私の買いそうな色。ちゃんと知ってるみたいに出してくる。

今日の私は、その「知ってるよ」みたいな感じが、少しだけ苦しかった。いや、普通はありがたいことなんだと思う。探す手間が省けて、迷う時間が減って、効率的に買える。だけど、今日の私には「効率」が刺さりすぎた。効率よく、私の空白が埋められていく感じがしたから。

ページをスクロールするたびに、かわいい服が出てくる。ちょっと気分が上がりそうな色。仕事が始まったら使えそうな形。ラクそうだけど手抜きに見えないやつ。私はそれを見ながら、頭の中で勝手に未来の自分を着せ替えしていました。「これ着たら、ちゃんとして見えるかも」「これなら、疲れてても大丈夫そう」「これで、来週の自分が少しマシになるかも」。

そのとき心の中で浮かんだ、誰にも言わなかった本音はこれです。

“私、服が欲しいんじゃなくて、言い訳が欲しいんだ。”

似合う服が欲しいんじゃない。新しい服が欲しいんじゃない。たぶん、ちょっと疲れた自分に、「でも新しい服買ったし、明日から頑張れる」って言える材料が欲しいだけ。そう思った瞬間、急に指が止まりました。画面の中のかわいい服が、ちょっとだけ遠くに見えた。

カートに入れる指が、いちばん正直だった

気づいたら、私は何着もカートに入れていました。お正月のセールの空気って、背中を押すのが上手い。期間限定、在庫僅少、クーポン期限。そういう言葉が並ぶと、生活の中の決断が、妙にゲームみたいになる。

でも、今日の私の違和感は「お得」そのものじゃなくて、「決断の速さ」でした。迷いながら選ぶならまだいい。私が怖かったのは、迷ってない顔で、スルスルとカートを増やしている自分。たぶん、疲れてるときの私って、悩むのがしんどくて、悩まない形に逃げる。選ぶ理由を考えるより、「今買えばいい」にすべてを預ける。

カートの中身を見たら、色味が似ていて、用途もかぶっていて、たぶん冷静な日なら「どっちかでいいじゃん」って自分に突っ込むやつばかり。なのに、今日の私は「どっちもほしい」を平気で選んでた。ほしい、というより、どっちも入れておけば安心、みたいな顔で。

ここでまた、言わない本音が出てきました。

“選べないって、私の弱さじゃなくて、たぶん怖さなんだ。”

どれかを選んで、どれかを捨てるのが怖い。服の話をしているのに、急に人生っぽい話になってしまうのが嫌で、私は画面を閉じようとした。だけど閉じる前に、カートの合計金額が目に入って、笑ってしまった。笑うしかない。こういうときの私は、だいたい自分に甘いのに、レジに行く瞬間だけ急に厳しい。

わかる…って言われそうだけど、ほんとに、「カートまでは秒なのに、購入のボタンだけ急に重い」って、あるあるじゃないですか。私だけだったらごめん。

「届いたのに嬉しくない」って、案外ちゃんとしたサインだった

夕方に届いたニットを、鏡の前で合わせてみました。悪くない。むしろ好き。けど、心が動かない。私はそこで、今日の小さな変化に気づきました。

嬉しくないのは、ニットのせいじゃない。私の状態のせい。服が悪いわけじゃないのに、服に気持ちを立て直してもらおうとしている。今日の私が欲しかったのは、似合う一枚じゃなくて、静かな安心だった。

楽天ファッションの中には、今日の私を元気にしてくれそうなものがたくさんある。実際、今まで何度も助けられてきた。忙しい日も、店舗に行けない日も、試着に疲れた日も、「家で選べる」ってだけで救われることがある。だから否定したいわけじゃないんです。むしろ、好き。

でも今日だけは、そこに少しだけ距離を置きたくなった。買う買わないの話というより、「私の気持ちの穴を、服で埋める癖」に気づいてしまったから。

私はカートを開いて、入っている服をひとつずつ見直しました。そして、全部削除はしなかった。そこが今日の私らしい。極端にしない。潔くない。でも、ひとつだけ、いちばん勢いで入れたものを消してみた。たったそれだけ。

消した瞬間、スッキリ!みたいな爽快感は来ませんでした。むしろ、「え、これでいいの?」って不安がちょっと残った。だけど、その不安が残ったことが、今日の発見だった。不安って、消すために買い物をしていたんだな、って。

箱の中のニットを畳み直して、クローゼットの手前に置きました。しまい込むほど愛せてないのに、捨てるほど嫌いでもない。その中途半端さが、今日の私にちょうどよかった。今日は「好き!」って言い切れるものより、「まあ、悪くない」が必要だったのかもしれない。

部屋の電気を少し落として、スマホを伏せました。完璧な習慣とか、丁寧な暮らしとか、そういう方向に行きたいわけじゃない。ただ、今日の私は、画面の中の「おすすめ」より、自分の呼吸のほうを先に見たかっただけ。

ねえ、もしあなたも、届いたのに嬉しくない日があったら、それって「買い物が悪い」の前に、「あなたが疲れてる」っていう合図かもしれないよね。
今夜、あなたのカートの中には、どんな気持ちが入ってますか。