気持ちまで乾いていた日に、肌だけは置いていかなかった話|ザ・ダーマベスト5レチノール+コラーゲン

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うまくいかなかった日の、肌だけは見捨てないでいたい。

帰り道、駅のホームの風がいつもより冷たくて、コートの襟を立てた。時間は19時すぎ。空はもう真っ黒で、売店の灯りだけがやけに明るい。改札の前で、誰かの笑い声が跳ねて、私はそれを聞き流すふりをした。

今日は、うまくいかなかった。

大きな失敗じゃない。けれど「小さくつまずいた回数」が多すぎて、気持ちが擦り切れてしまった日。

会社で送ったメッセージ、語尾が冷たく見えたかもしれない。

いや、見えた。相手の返信がいつもより短くて、胸の奥がじわっと縮んだ。

たぶん気のせい、の範囲。だけど「気のせい」って、心の免罪符みたいで、私はあまり信用していない。

帰宅してすぐ、玄関の鏡を見た。髪が少し広がっていて、目の下に疲れがある。

「私、今日ずっと、誰にもいい顔してない」

そう思った瞬間、なんだか悲しくなった。いい顔って、愛想とか、笑顔とか、そういうもののことじゃなくて。もう少し、自分の輪郭がやさしく見える顔。人に向ける前に、自分に向けたい顔。

部屋の電気をつけると、散らかったままの床がいきなり現実になる。脱いだままの靴下、読みかけの本、畳みそびれた洗濯物。

ちゃんと暮らしてる人の部屋は、私の部屋より静かなはずだ、って思う。静けさの量で生活が測れるなら、私はいつも途中だ。

キッチンの蛇口をひねって、手を洗った。水が冷たくて、指先だけが現実に引き戻される。

うまくいかなかった日って、「ここから切り替えよう」ができない。切り替えって、才能だと思う。

器用な人が持っている、薄いカードみたいなもの。私はそれをいつも財布のどこかに忘れてくる。

スマホを見ると通知がひとつ。期待していた人じゃない。画面を閉じる。

この“閉じ方”が、今日いちばん正直だった気がする。

それでも夜は来るし、鏡の前には立つ

お風呂の湯気で鏡が曇って、そこに映る自分がぼやける。ぼやけた顔は、少しだけ許せる。輪郭の強さが薄まると、責める言葉も鈍くなる。

メイクを落とす。まつ毛の間に残ったマスカラが、目の端に黒い線を作る。丁寧に落とせない日もあるけど、今日は落とした。落とす作業をしているうちに、「ちゃんとできた」が一個だけ増える。たった一個。だけど今日は、たった一個が大事だった。

洗面台のライトの下で、肌がはっきり見える。

くすみとか、乾燥とか、そんな単語が頭をよぎる前に、私は別のことを思った。

「私の顔って、今日どんな気持ちで動いてたんだろう」

口角を上げた瞬間があったかもしれない。相槌を打ったとき、目を合わせたとき、会釈したとき。そういう小さな動きの全部が、今日の私の“がんばり”だった。

でも、がんばりって、誰にも可視化されない。ポイントもつかないし、評価シートにも書かれない。がんばったのに、ちゃんと報われないとき、私は肌のせいにしたくなる。疲れて見えるのは肌が荒れてるから、とか。印象が良くないのは顔色が悪いから、とか。ほんとは心が先なのに。

棚から、ザ・ダーマベスト 5レチノール+コラーゲンを取り出した。

こういう夜に、私はこういうものを手に取る。理由はきれいじゃない。「若返りたい」みたいな、わかりやすい願いよりも、「今日の私を、このまま放置したくない」に近い。

レチノールという言葉には、少し緊張感がある。丁寧に扱わないといけない気がして、気持ちが整っていない夜ほど慎重になる。

だけど同時に、肌の深いところに触れるような響きがあって、私はその“ちゃんと効きそう感”に救われることがある。コラーゲンという言葉の方は、もう少しやさしい。

弾む、とか、支える、とか、戻る、とか。今日の私が欲しいのは、たぶんそのへんの感覚だ。

手のひらに出して、顔にのせる。

ひんやりした感触が広がって、少しだけ呼吸がゆっくりになる。肌に触れているのに、触れているのは心の方かもしれない、って思う。そういうときがある。スキンケアが、何かを“直す”というより、“落ち着かせる”作業になる夜。

塗りながら、今日の小さなモヤっとした瞬間が戻ってくる。

昼過ぎ、同僚の一言に曖昧に笑ってしまったこと。

ほんとは少し傷ついたのに、傷ついた顔をするのが負けみたいで、笑った。

帰り道、電車の窓に映った自分が、なんとなく頼りなく見えたこと。

スーパーでレジの人に「ポイントカードは?」と聞かれて、持ってるのに忘れたふりをしたこと。

「忘れたふり」って、たぶん心が疲れているサインだ。説明する気力がないとき、人はふりをする。

私は今日、いくつ“ふり”をしただろう。

平気なふり。気にしてないふり。余裕があるふり。ちゃんとしてるふり。

スキンケアを終えると、鏡の中の肌がほんの少しだけ整って見える。劇的じゃない。たぶん光の加減もある。けれど、その「ほんの少し」に、私は寄りかかる。だって今日みたいな日には、大きな変化は怖い。大きく変わることは、また別の責任を生む。私は今夜、責任を増やしたくない。

ベッドに入る前、部屋の隅の洗濯物が視界に入る。片づけなきゃ、と一瞬思って、やめた。

その代わり、顔に触れる。肌はまだ少ししっとりしている。

“今日の私を見捨てなかった”という事実が、そこに残っている気がした。

ここまで書いて、私は自分に問いかけてしまう。

うまくいかなかった日の私は、何が欲しかったんだろう。

慰め?評価?休息?それとも、ただ「分かってほしかった」だけ?

たぶん、全部。

でも全部を一気に手に入れようとすると、また疲れる。だから私は今夜も、ザ・ダーマベスト 5レチノール+コラーゲンみたいな“手触りのあるもの”に一旦寄りかかって、明日まで持ち越す。答えは出さない。出すほど元気もない。

正解より、揺れを抱えたまま眠る。

それでも明日は来るし、鏡の前にはまた立つ。

そして、たぶんそのとき私は、今日より少しだけ違う顔をしている。